簡単な電磁気の考察から見える特殊相対性理論の入り口
1.疑問
図1
図1のように真空中にある無限長線状荷電体の間にかかる単位長さ当たりのクーロン力は、
・・・(1)
(:線状荷電体の線電荷密度 :真空中の誘電率 :線状電荷体間の距離 )
となる。(ガウスの定理から簡単に導ける)
図2
次に図2のように線状荷電体と平行に速度で等速直線運動で移動する観測者を考えてみる。(速度の慣性系から観測すると考えてもよい。) 図2の観測者から見ると図1の線状荷電体は電流とし観測されその大きさは、
・・・(2)
となるが、電流が発生するということはアンペールの法則により線状帯電体間にはクーロン力とは別の力、アンペール力が働き、その大きさは単位長さ当たり、
=・・・(3)
(:真空中の透磁率)
である。(ビオ・サバールの法則から簡単に導ける) 図2によると、アンペール力はクーロン力と反対に働くので線状帯電体間に作用する力は、
-
・・・(4)
これにより古典的な電磁気学は、慣性系によって法則が異なるという奇妙な理論であるということになる。しかも、作用する力の大きさが(1)と(4)で異なるというほとんど論理的に破綻していると考えられる結果が導かれる。
2.検証
矛盾した結果が導かれる原因は、導出過程に誤りがあるか、あるいは前提条件に誤りがあるかのいずれかである場合が多い。(1)(4)ともに導出過程は高校生でも可能な程度の単純なもので誤りがあるとは考えにくいので、後者を検討してみる。 すると1つの疑問として浮かび上がるのは、線状荷電体の線電荷密度が静止系から観測しても、慣性系から観測しても本当に同一であるかということである。 そこで、慣性系からは線電荷密度が に変化するものとして、(1)と(4)の力が等しいとすると、
=
∴・・・(5)
となる。なお、本来なら±となるが符号が変わることはないだろうと考え、+だけを採用した。
そして、= (:光速度)という関係があるため、
・・・(6)
と、特殊相対性理論ではお馴染みの数式の形が浮かびあがる。
さらに、電荷量は保存されるので、 、 とすれば、
・・・(7)
ローレンツ変換のような(7)を導くことができる。
3.発展
図3
今度は図3のように直線状の荷電体の1本とその側に点電荷を置いた場合を考える。点電荷の電荷をとすると静止系のクーロン力は(1)の代わりに、
・・・(8)
となる。
慣性系から点電荷にかかる力はクーロン力とローレンツ力となり、(4)の代わりに、
・・・(9)
となるが、(6)と= (:光速度)を用いると、
・・・(10)
となり、(9)と(10)は一致しない。点電荷は大きさが無いのでローレンツ収縮の影響を受けないハズではあるが、(9)と(10)を一致させて矛盾を無くすためには、慣性系から見た点電荷の電荷量は、
・・・(11)
となるはずである。
この(6)を質量密度に適用すれば、電荷量のアナロジーから質量についても同様に、
・・・(12)
が成り立つことが想像できる。
このように電磁気学の簡単な考察から特殊相対性理論の片鱗を見ることができるわけであるが、もう少し考察を進めると相対論的な速度の加法定理が導けそうである。